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よみがえりの神オシリス:古代エジプトに伝わる不思議な物語

目次

序章:オシリス神ってどんな神?

オシリス神のご紹介

満天の星がきらめく古代エジプトの夜空。その神聖な空のもとで、とくに人々に大切にされていた神様のひとりが、オシリスです。
オシリスという名前には「力強い目」や「座っている者」といった意味があり、数ある神々の中でも特別な存在とされていました。

オシリスは、エジプト神話の中心にいる重要な神様。彼は「死と再生」、そして「豊かさや農業」を象徴していました。
エジプトの人々にとっては、最初のファラオであり、人が亡くなったあとの世界でその魂を裁く裁判官のような存在でもあったんです。
彼の物語には、悲しみや苦しみを乗り越えて復活するというストーリーが込められていて、それが死後の世界に対する古代エジプト人の考え方と深く関係していました。

オシリス神のシンボルと意味

オシリスはよく、肌が緑や黒に塗られた姿で描かれます。頭には王冠をかぶり、王の象徴である笏(しゃく)や鞭を持っている姿です。
この緑や黒の肌は、「再生」や「大地の恵み」、つまり新しい命を表しています。
ときにはミイラのような姿でも描かれますが、これはオシリスが「死者の神」として、死後の世界をつかさどっていることを示しています。

さらにオシリスは、ナイル川の洪水と密接な関わりがあります。毎年やってくるこの洪水は、土地を潤し、農作物を育てるために欠かせないものでした。
この自然のサイクル――つまり、「水が満ち、命が芽生える」流れは、オシリスの「死と再生」の物語とぴったり重なるのです。

オシリスの神話には、「生きること・死ぬこと・そしてまた生まれ変わること」という、人間にとって普遍的なテーマが描かれています。
だからこそ、彼への信仰はとても広がり、深い意味を持ち続けてきたんですね。

第一章:オシリス神話のはじまり

古代エジプトの神様とオシリスの特別なポジション

古代エジプトでは、たくさんの神様たちがいて、それぞれが自然や宇宙のしくみとつながっていると考えられていました。その中でも、オシリスは特別な役割を持った神様として知られていました。

オシリスは、地上で最初のファラオ(王様)であり、同時に死後の世界を治める王様でもあると信じられていました。この「現世の王」と「死後の王」の両方を兼ねているという点が、他の神様とはちがうユニークなところです。
また、オシリスは「死と再生の神」とも呼ばれていて、命が終わってもまた新しく始まるという希望を象徴していました。だからこそ、人々は死後の世界にも安心して向かうことができたんですね。

オシリス神話のうまれと広がり

オシリスにまつわる神話は、エジプト神話の中でもとても古いもののひとつです。なんと、紀元前5000年ごろのプレディナスティック時代(王朝が始まる前の時代)にまでさかのぼるとも言われています。

この神話の中には、神様たちの間の争いや、家族の愛と裏切り、そして命の再生といった、どんな時代の人にも通じるテーマが描かれています。まるで人間の世界をそのまま映したかのような物語なんです。

エジプトの信仰は時代とともに変化していきましたが、とくに新王国時代(紀元前1550年ごろ〜1070年ごろ)になると、オシリス神話はさらに大きく広がります。この頃には、オシリスの息子・ホルスが王位を継ぐ話も加わって、王様の正当なつながりがより強調されるようになりました。

この物語のおかげで、「人もまた、オシリスのように死後に復活できる」という考え方が信じられるようになり、エジプトの人々にとって死後の世界は希望に満ちたものになったのです。

第二章:オシリス神話のおはなし

セトの裏切りとオシリスの死

オシリス神のおはなしは、弟セトの裏切りから始まります。
セトは、兄であるオシリスが人々に慕われ、力を持っているのをねたみ、なんとかして彼を倒そうとたくらみました。

ある日、セトはとても美しい棺(ひつぎ)を用意して、宴(うたげ)を開きます。そこでセトは、
「この棺にぴったり体が収まる人がいたら、プレゼントしよう!」
と言ってみんなに順番に入らせました。

でも実はその棺、最初からオシリスの体にぴったり合うように作られていたんです。
何も知らずに棺に入ったオシリスは、すぐにフタを閉められてしまい、そのままナイル川に流されてしまいました。
棺は長い旅の末、遠くのビブロスという場所の海岸にたどり着きます。

イシスの愛とオシリスの復活

オシリスの妻、女神イシスは、愛する夫を助けようとあきらめずに探し続けました。
やがてビブロスの海岸で棺を見つけ、オシリスの体をエジプトに持ち帰ります。

でも、それを知ったセトが再び邪魔をします。今度はオシリスの体をバラバラにして、エジプト中にばらまいてしまったのです。
それでもイシスはくじけず、妹のネフティスと力を合わせて、オシリスの体を一つひとつ探し集めました。

イシスは神々の力を借りて、オシリスを一時的に生き返らせます。そしてそのとき、ふたりの間に子ども――ホルスが宿ったのです。

ホルスの誕生と父の名誉の回復

オシリスは完全に生き返ることはできませんでしたが、その代わりに死後の世界、つまり冥界の王となりました。

そして、生まれてきたホルスは父オシリスの死を乗り越え、立派に成長します。やがて彼は、父を倒したセトに戦いを挑みました。
その戦いは長く苦しいものでしたが、ホルスはついに勝利をおさめ、父の名誉を取り戻します。こうして彼は、エジプトの正当な王として即位したのです。


このオシリス神話には、「裏切りとゆるし」「死と再生」「正義の回復」など、いまの私たちにも通じる深いテーマがたくさん詰まっています。
オシリスとその家族の物語は、古代エジプトの人々にとって、生きること・死ぬこと、そして希望を持ち続けることの大切さを教えてくれる、心に残るお話だったんですね。

第三章:オシリス神をめぐる信仰と儀式

みんなで祝うオシリスのお祭り

古代エジプトでは、オシリス神を信仰する気持ちは社会全体に広がっていて、彼にまつわるお祭りや儀式がたくさん行われていました。
なかでも「オシリス祭り」は特に大きな行事でした。このお祭りでは、オシリスの死と復活の物語が象徴的に再現され、豊かさや新しい命のめぐりをお祝いしました。

祭りに参加する人たちは、オシリスの死を悼んで泣いたり、復活の場面では喜びの声をあげたりと、感情をたっぷり表現します。こうすることで、人々は神々と自然のリズムとより深くつながることができたのです。

また、ホルスとセトの戦いや、オシリスのよみがえりを描いた物語は「神聖な劇(しんせいなげき)」として、いろんな地域で演じられていました。
こういった儀式や演劇は、エジプトの人たちにとって、神様たちの世界と自分たちの暮らしがつながっていることを感じるための大切な方法でした。

ミイラとオシリス信仰の関係

ミイラ作りといえば古代エジプトの象徴のような文化ですが、これもオシリスへの信仰と深く結びついています。
オシリスが亡くなったあと、イシスが彼の体を集めて復活させたという神話が、ミイラ作りの「宗教的な意味」を与えているんです。

エジプトの人たちは、亡くなった人の体を丁寧に保存することで、その人の魂がこの世界とつながりを保ち、あの世(冥界)でも生き続けられると信じていました。
この考え方はまさに「オシリスのように、死んでも再び生きる」ことを願ったものなんですね。

だから、オシリス信仰はただの神話ではなく、人々の「生きること」「死ぬこと」「その先の世界」への考え方の中心にあったのです。

第四章:オシリス神のシンボルとその広がり

オシリス神ってどんなイメージ?

オシリス神は、「豊かさ」「よみがえり」「死後の世界」を象徴する神様として知られています。
描かれるときは、よく緑や黒の肌をした人間の姿で登場します。
緑は“命の再生”、黒はナイル川の肥えた土を表していて、“豊穣”や“死”を意味しているんです。

また、オシリスが手に持っているのは、農業に使う「フライル(穀物を打つ棒)」と「牧杖(ぼくじょう)」という杖。
これらの道具は、彼が農業や自然の恵みをつかさどる神様であることを表しています。

そしてもうひとつ印象的なのは、ミイラのように体を包帯でぐるぐる巻きにされた姿。
これは、オシリスが“死者の神”であること、そしてミイラ文化とも深い関わりがあることを示しています。

オシリス神が現代にもたらしたもの

古代エジプトの宗教はもう存在していませんが、オシリスをはじめとする神々の物語やシンボルは、今でも文化や芸術の中で生き続けています。

とくにオシリスの物語には、「死と再生」「正義と復讐」「愛と献身」といった、時代を超えて共感されるテーマが詰まっていて、
現代の小説や映画、宗教的な考え方にも少なからず影響を与えているんです。

たとえば、キリスト教における「イエス・キリストの死と復活」とオシリスの神話には、似ている点があると多くの研究者が指摘しています。
また、ミイラ作りの習慣や、死後も魂が生き続けるという考え方は、現代でも“死後の世界”や“体を残す意味”を考えるうえで、ひとつのルーツとなっています。

結章:オシリス神の永遠の物語 ― 不死と再生の象徴

オシリスと「死ぬこと」の意味

オシリス神は「不死」と「よみがえり」の神様として、古代エジプトの人たちの“生きること・死ぬこと”への考え方に深く関わっていました。
エジプトの人々は、死を「終わり」とは思っていませんでした。むしろ、死とは人生のひとつの節目であり、その先に“新しい世界”があると信じていたんです。

この考え方のおかげで、人々は死を怖がるのではなく、ある意味でそれを受け入れ、時には希望を持って受けとめることもできました。
それはお墓の中の壁画や棺の装飾、死者のための儀式などを見てもよくわかります。そこには「永遠の命」への信仰が込められていました。

オシリスの物語は、「死=終わり」ではなく、「死=新たなはじまり」だと教えてくれているんです。
正しい儀式を通して、その人はオシリスのようによみがえり、永遠の命へと進んでいける――それが彼の神話が伝えるメッセージでした。

オシリス神の教え、いまを生きる私たちへ

今の時代、オシリス神を信仰している人はほとんどいません。でも、彼の物語が持つテーマ――「死と再生」「愛と犠牲」「正義と復讐」――は、
現代の映画や小説、音楽やアートの中でも、たびたび描かれていますよね。

そして、エジプトの“ミイラ文化”も、今の私たちに問いかけてきます。
「人が死んだあとの体をどう扱うべきか?」という問いは、医学や倫理、宗教や哲学といった分野でも大事なテーマになっているんです。

結局のところ、オシリス神の神話は、ただの昔話ではありません。
生きることと死ぬこと、その間にある愛や犠牲、正しさや希望といった“人間にとって大切なこと”を考える手がかりなんです。

だからこそ、オシリスの物語は何千年も前に生まれたにもかかわらず、いまでも私たちの心に何かを語りかけてくるのかもしれませんね。

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この記事を書いた人

ご挨拶:ファンタジーが大好きです。古代の歴史はスピリチュアル的な魅力に満ちあふれていると思いませんか?私たちと一緒に古代の遺跡・神話・文明の世界をスピリチュアルの観点から探求しましょう。
編集長:中央大学卒。在学中、国際政治史を学ぶ中で、人間の歴史においては同じような過ちが繰り返されていることに気づく。歴史を学ぶことは、現在の世界をよりよく理解し、未来に進むために不可欠であると考えるようになった。アニミズム等にも関心があり、スピリチュアルの観点から古代史を概観するメディアを制作。

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